養育費を強制執行する方法

離婚時に養育費の支払いについて取り決めを行ったにも関わらず、相手から支払われなかったり、遅延が続いていたりと悩まされる方も多いのではないでしょうか?

では、実際に未払いの養育費を「強制執行」する方法や手順はどのようなものなのでしょうか?

養育費の強制執行とは?

「養育費の強制執行」とは、離婚時の協議や調停、審判において公正証書や審判書によって定めた養育費が支払われなかった場合、「支払う義務のある人の財産を差し押さえて、強制的に支払いをしてもらうこと」を言います。

離婚の調停や審判は家庭裁判所で手続きを行いますが、強制執行は地方裁判所へ申立てを行うことになります。

養育費の強制執行でできること

養育費の回収のために強制執行を行う場合には、どんなことができるのでしょうか。

  • 給与や預貯金を差し押さえることができる
  • 将来の養育費も差し押さえることができる

給与や預貯金を差し押さえることができます

養育費の回収のために強制執行を行う場合、元パートナーの給与や預貯金を差し押さえることができます。ただし、未払いの養育費が多額の場合であっても、回収には限度額が法的に設定されているため、給料の全額は差し押さえすることはできません。

原則として、給料から税金と社会保険料と通勤手当を引いた金額の2分の1、もしくは金額の2分の1が33万円を超えたら、上限は33万円までしか回収できないことになっています。
給料を差し押さえるとは?
「相手の給料を差し押さえる」とは、自分で元パートナーが勤務している会社に連絡をして、養育費の支払い交渉をするものではなく、裁判所を経由して強制執行を行い、元パートナーの給与を養育費の支払いのために差し押さえすることになります。

強制執行で給料を差し押さえるための条件

  • 債務名義があること
  • 元パートナーの勤務先の会社名や住所を把握すること
  • 相手の現住所を把握する
債務名義が必要です

まず1つ目の条件として、「債務名義」が必要となります。強制執行を裁判所へ申立てする場合には、養育費を強制的に回収できる証明として、債務名義が必要になります。

債務名義とは、以下のような、公正証書による養育費を支払う旨の合意書や調停調書、審判書、判決文のいずれかを指します。

  • 強制執行認諾文言付き「公正証書」
  • 調停離婚で作成される「調停調書」
  • 離婚審判で作成される「審判書」
  • 裁判時で作成される「和解調書」や「判決正本」
元パートナーの勤務先の会社名や住所を把握しましょう

強制執行を裁判所に申立てする際、給与の支払先を特定するために元パートナーの現在の勤務先の会社名や住所を把握しておく必要があります。

「資格証明書」と呼ばれる勤務先の代表者事項証明書などの原本を用意しなければいけません。離婚時から勤務先が変わっている場合は注意しましょう。ご自分で調査することが困難の場合は、弁護士の力を借りるのも一つの手段です。

相手の現住所を把握しましょう

元パートナーの現在の住まいを把握する必要があります。この点においても、ご自分で調査することが困難の場合は、弁護士の力を借りるのも一つの手段です。ご自身では把握ができなくても、弁護士に依頼をすると調査を行ってくれます。

離婚時に養育費の取り決めを単なる口約束で終わらせてしまった場合、債務名義がないケースは、弁護士に相談されることをおすすめします。

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将来の養育費も差し押さえることができます

強制執行を行う場合、未納の養育費に加えて、今後支払ってもらう予定の養育費も併せて差し押さえをすることができます。

すでに督促を行っても養育費を支払ってもらえない状態が続いているという現状で、併せてお子さまの未来のためにも手続きを行っておくことをおすすめします。

養育費確保の手続的な負担軽減の観点から、民事執行法の改正が行われ、平成16(2004)年4月1日より、養育費など扶養義務等に基づく定期的な債権について、相手方が期限の到来した分の養育費を支払わない場合において、その給料や賃料等を差し押さえるときには、将来の分についてもまとめて強制執行の手続をとることができるようになりました。

参考 厚生労働省「養育費の確保策」

ところで、実際に強制執行の申し立てを行う場合、どのような方法でどのような手順で行うのでしょうか?

強制執行の申立て方法

強制執行の申立てを行う流れは以下のとおりです。

  • ①申立てに必要な書類をそろえましょう
  • ②裁判所で手続きをしましょう
  • 裁判所が差押命令を相手と相手の勤務先に送達します
  • ④相手の勤務先と差し押さえの方針を話し合いましょう
  • ⑤回収できたら裁判所に取立届を提出しましょう

申立てに必要な書類

  • 公正証書による合意書正本、調停調書、審判書、判決文等の債務名義
  • 執行分の付与
  • 債務名義正本の送達証明書
  • 戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 住民票、戸籍附票
  • 法人の資格証明書(法人の登記事項証明書又は代表者事項証明書)
  • 債権差押命令申立書表紙
  • 当事者目録
  • 請求債権目録
  • 差押債権目録
このような書類を準備する時間や手間が億劫だという方は、弁護士に依頼するといった方法もありますので利用してもいいかもしれませんね。

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書類が準備できたらいよいよ裁判所で手続きを行うことが出来ます。申し立てを行う裁判所は、基本的には相手方の住所地にある地方裁判所になります。

強制執行の審査が完了すると、裁判所から支払義務者である相手と相手の勤務先に差押命令が送達されることになります。その後、申立てを行った人に裁判所から送達証明書が届きます。

差押命令が送達され、1週間が経過すれば取立てを行うことができるので、差し押さえ先となる銀行や勤務先などと差し押さえの方針を決めましょう。

未払い分の養育費を回収できたら、裁判所に取立届を提出して完了となります。

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適切な手続きで養育費を受け取りましょう

本来養育費は、適切な手続きさえとれば、ほとんどの場合で養育費は確実に受け取ることができます。離婚したけれども養育費が支払われず悩んでいる方は、是非弁護士にご相談することをおすすめします。

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